抄録
Ischemic preconditioningとは短時間の虚血の前処置が虚血障害に対して保護的に作用するという逆説的な現象である. ミトコンドリアでのATP産生を減少させる2, 4-dinitrophenolが細胞膜ATP感受性カリウム (KATP) チャネル活性およびミトコンドリア脱共役の指標であるフラボプロテイン酸化に及ぼす影響をラット遊離心筋細胞を用いて検討した. さらに, ミトコンドリアKATPチャネルの阻害薬である5-hydroxydecanoic acidが前処置効果に及ぼす影響も検討した. 前処置を行った細胞では, 行わなかった細胞に比較して再びATP産生が減少する状態になったときに, 細胞膜KATPチャネル活性化およびミトコンドリアの脱共役が速やかに, かつ大きく起こった. また, 5-hydroxydecanoic acidの存在下でこの感作作用が完全に消失した.