抄録
本研究の目的は, 体内で自己組織の再生を誘導するin situ Tissue Engineeringにより, 気道の臓器再生を実現することである. 組織再生の足場としてポリプロピレンメッシュとコラーゲンスポンジから構成される人工材料を開発した. 動物実験でこれを移植し最長5年の観察で, 気管, 主気管支, 輪状軟骨の組織再生を確認した. これらの結果をふまえて, 世界に先駆けて頸部気管で臨床応用を開始し, 術後10ヵ月の時点で経過順調であった. しかし, 胸部気管や分岐部気管ではまだ解決すべき問題は多い. 今後は基礎実験の成果を臨床に橋渡しするトランスレーショナルリサーチにより, 気道の各部位に応じた再生治療の開発が期待される.