2005 年 25 巻 5 号 p. 560-563
69歳, 男性. 16年前発症の脳梗塞のため, 右片麻痺と運動性失語があり, 中枢性疼痛を伴っていた. 約3ヵ月前より右半身の疼痛が増強し, 当院ペインクリニック外来に紹介された. 患者は運動性失語症のため, 痛みの性状などを明確に表現できなかった. ドラッグチャレンジテストではモルヒネ, バルビツレート (チオペンタール) ともに陰性で, 診断・治療法の決定が困難であった. そこで, 選択肢を提示して回答させる問診法に変えて診察や検査を行ったところ, L5神経根症の合併が判明した. 以後, 右L5神経根ブロックとケタミン少量点滴で疼痛はほぼ軽快した. 中枢性疼痛患者に神経根症などの末梢性疼痛が合併している可能性を考えることは重要である. また, 失語症を伴う症例では表現の制約があるため, 痛みについての問診には工夫が必要である.