日本臨床麻酔学会誌
Online ISSN : 1349-9149
Print ISSN : 0285-4945
ISSN-L : 0285-4945
日本麻酔・医事法制(リスクマネジメント)研究会 症例報告
ガイドライン(指針)を根拠に刑事訴訟に至った事例の検討
木内 淳子安本 和正後藤 隆久野坂 修一小林 功武
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 35 巻 1 号 p. 120-127

詳細
抄録

  平成20(2008)年に麻酔科医が後期研修医の指導のため手術室不在時,麻酔器の蛇管が外れたことに起因する事故が発生した.院内調査委員会では蛇管が外れた原因は特定できず,アラーム音は外科医などには聞こえなかったとした.担当麻酔科医は,ガイドライン(指針)の記載内容を根拠に刑事訴追された.裁判官は,(1)蛇管が外れた原因は手術室にいた人の行為が原因と推測する,(2)手術室にいた人にアラーム音が聞こえなかったことには疑問の余地が少なからずある,(3)指針は学会としての目標を示すもので,遵守すべき業務上の注意義務とは言えない,として無罪を言い渡した.ガイドラインは,刑事訴訟においても,医療水準を示す資料の1つであるとされた.

著者関連情報
© 2015 日本臨床麻酔学会
前の記事 次の記事
feedback
Top