抄録
外傷性脊髄損傷,特に仙髄上位損傷の患者にみられる神経因性膀胱は,膀胱容量の減少,頻回の不随意尿失禁,残尿の発生など排尿のコントロールを困難にする.われわれは,脊髄損傷患者3名にフェノールグリセリンによるサドルブロックを行ない,その前後におけるシストメトリー(膀胱内圧曲線)による膀胱容量の測定,および尿失禁の有無を検討した.症例1,3に関しては十分な膀胱容量の増加,尿失禁の軽減を得たが,症例2においては,受傷後10年という経過もあり十分な膀胱容量の増加を得ることはできなかった.受傷後比較的早期のS領域のクモ膜下フェノールグリセリンブロックは,核上型脊髄損傷患者の神経因性膀胱に対し膀胱容量の増大,尿失禁の軽減に有効な方法であると考える.