1995 年 15 巻 3 号 p. 221-226
人工股関節全置換術において,同種血輸血を回避する目的で低血圧麻酔と術中自己血回収術を併用した。プロスタグランジンE1による低血圧麻酔を併用した場合(PG群)の回収血の溶血についてイソフルランを用いて低血圧とした群(ISO群)を対照に比較検討した。術後に回収血をCell SaverTMにて洗浄,濃縮し,返血と洗浄廃液中の遊離ヘモグロビン濃度を測定し,溶血率を算出した。両群間に出血量,術中輸血量の差はなかったが,返血,洗浄廃液ともに遊離ヘモグロビン濃度はISO群に比べPG群で有意に低く(P<0.05),溶血率も低かった(P<0.05)。以上の結果より術中自己血回収と低血圧麻酔を併用する場合に,プロスタグランジンE1は溶血防止に有利であると考えられた。