2007 年 46 巻 4 号 p. 197-202
目的 : 乳癌細胞のHER2蛋白発現程度およびHER2 遺伝子増幅の有無と細胞異型度との関連について検討した.
方法 : 浸潤性乳管癌50例を対象とした. 乳腺穿刺吸引細胞診標本を用いて, 乳癌細胞のPapanicolaou染色, HER2蛋白免疫染色およびHER2 遺伝子検索を行った. 乳癌細胞の異型度は, 1) 背景の壊死の有無, 2) 細胞の大きさ, 3) N/C比, 4) 核縁の不整, 5) 核小体の大きさ, 6) 核小体の数, 7) 核の大きさ, 8) 核の大小不同, 9) クロマチン顆粒の形状, 10) クロマチンの濃度および11) 核分裂数の11項目について検討した. 各項目を0~3にスコア化し, HER2蛋白発現程度およびHER2 遺伝子増幅の有無との関連について統計学的に検討した.
成績 : HER2蛋白発現程度と細胞異型11項目すべてとの間には有意の関係は認められなかった. HER2 遺伝子増幅の有無と細胞異型との間では, 「背景の壊死」 の項目との間にのみ有意の関係が認められた.
結論 : 浸潤性乳管癌の穿刺吸引細胞診標本における 「背景の壊死」 の有無は, HER2 遺伝子増幅の有無を示唆する所見であり, 術前の予後や治療効果の予測に役立つものと考えられる.