日本臨床細胞学会雑誌
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原著
がん検診受診歴のある浸潤子宮頸癌症例の検討
松浦 祐介卜部 理恵鏡 誠治川越 俊典土岐 尚之蜂須賀 徹柏村 正道
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2009 年 48 巻 3 号 p. 91-96

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抄録

目的 : がん検診受診歴を有する浸潤子宮頸癌症例の臨床的特徴や細胞診を検討し, がん検診の精度管理上の問題点を検証する.
方法 : 過去 23 年間に当科で治療を行った子宮頸癌のうち, 3 年以内にがん検診受診歴のある I b 期以上の 70 例を対象に組織型・細胞像・臨床所見を中心に後方視的に検討した.
成績 : 浸潤癌のなかで検診歴がある症例の比率は 13.2%であった. 70 例の組織型は扁平上皮癌 43 例, 非扁平上皮癌 27 例で, 検診歴のない群に比較して腺系の腫瘍が有意に多く, 年齢が若い傾向にあった. また, II期までの早期症例が多かった. 不正出血などの自覚症状を有した症例は 56 例 (80%) あり, 当科治療時に明らかに肉眼的浸潤癌であった症例は 40 例 (57%) であった. 異常細胞診を指摘されながら精検が未施行や患者自身が放置していた症例が 10 例あり, 異形成の診断で経過観察されていたものは 11 例であった. 他の 49 例は 3 年以内の細胞診は陰性と判断されていた.
結論 : 細胞診によるがん検診には約 10%の偽陰性率があり, なかでも頸部腺癌では高率である. 診察時の肉眼所見や臨床症状も正確な診断に必要であり, さらに細胞採取器具の検討や LBC・HPV 検査の導入を考慮する必要がある.

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© 2009 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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