日本臨床細胞学会雑誌
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特集 <甲状腺穿刺細胞診—濾胞性腫瘍の問題点—>
「良悪性鑑別困難」の細分類
—腺腫様結節の細胞所見と濾胞性腫瘍の細胞所見—
谷口 恵美子高松 順太圓井 知江鍵弥 朋子布引 治尾崎 敬森 一郎覚道 健一
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2010 年 49 巻 1 号 p. 61-66

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抄録

目的 : 甲状腺穿刺吸引細胞診で, 良悪性鑑別困難とした症例の精度管理を行った. 濾胞性腫瘍と診断した症例の細胞像を検討し, 悪性の可能性の乏しい腺腫様甲状腺腫を推定する群を抽出した.
方法 : 良悪性鑑別困難の細胞診断の下, 手術された 14 例の細胞所見を再検討し, 組織診断と比較した. 対比症例として濾胞腺腫, 濾胞癌微小浸潤型と比較した.
成績 : 細胞診鑑別困難の手術例 14 例の, 術後の病理診断は, 悪性リンパ腫 5 例, 乳頭癌 1 例, 腺腫様甲状腺腫 6 例, 濾胞腺腫 2 例 (好酸性細胞腺腫 1 例, 異型腺腫 1 例) であった. つまり, 鑑別困難濾胞性腫瘍と診断した 8 例中 6 例 (75%) が腺腫様甲状腺腫 (腺腫結節) であった. これら 8 例の細胞所見の特徴は背景に泡沫細胞や多量のコロイドを認めるなどの嚢胞変性やコロイド嚢胞の特徴がなく, 細胞量も多く腫瘍性と診断したが, さらに(1)濾胞上皮細胞集塊は小型で, N/C 比も比較的大きい (核密度が高い) 群と, (2)細胞集塊は小型で, 細胞の N/C 比も小さい群と, (3)N/C 比が小で, 大型の濾胞細胞集塊が多数みられる 3 群に細分類が可能であった.
結論 : 濾胞性腫瘍と細胞診断した例は 3 群に分割が可能であった. N/C 比の小さい症例で, 細胞量が多くとも, 大型から中型の濾胞上皮集塊のときは, 腺腫様甲状腺腫の可能性が高く, 以降良性と診断することに変更した. 一方, 小型の濾胞細胞集塊が中心の症例では, 悪性の含まれる可能性がある, 真の良悪性鑑別困難であり, N/C 比の小のものは, 良悪性鑑別困難の (A) と診断し, N/C 比が大の (核密度が高い) 症例は, 悪性の含まれる可能性が高い良悪性鑑別困難の (B) と診断する.

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© 2010 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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