抄録
背景 : 肺原発の淡明細胞癌は肺癌取扱い規約 (第 6 版) および WHO の肺癌分類 (2004) では扁平上皮癌, 腺癌, 大細胞癌のそれぞれ特殊型として分類されており, いずれもきわめてまれである. 今回, 淡明細胞腺癌が優勢な混合型腺癌の 1 例を, 気管支擦過細胞診, transbronchial lung biopsy (TBLB) および切除肺組織標本で鏡検, 考察したので報告する.
症例 : 80 歳, 女性. 2008 年 4 月頃より咳嗽が続き, 右肺上葉に 2.5 cm 大の結節状陰影を胸部 X 線写真および CT で認め, 2008 年 10 月当院紹介受診. 気管支鏡検査が施行され, 気管支擦過細胞診, TBLB より低分化腺癌を認めた. 右肺上葉切除術が施行され, 摘出肺標本で淡明細胞腺癌優勢の肺原発混合型腺癌と診断した.
結論 : 気管支擦過細胞診, TBLB では低分化腺癌と診断したが, 摘出した肺腫瘍組織では 90%以上の領域が淡明細胞腺癌像を示した. 細胞質の淡明化の原因として細胞の水腫様変性が最も考えられ, 気管支鏡検査で採取される細胞診材料や TBLB では, 淡明細胞腺癌細胞が水腫様変性のためアーテファクトが生じやすく, 細胞診では細胞膜が破綻し, 裸核状の癌細胞を多数認め, TBLB においても淡明細胞腺癌に特徴的な所見が得られにくくなることが考えられる.