日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
症例
胸水中に多数の腫瘍細胞が出現した多発性骨髄腫
土田 秀小島 勝田端 里美神山 晴美中里 宜正飯島 美砂杉原 志朗正和 信英
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 49 巻 5 号 p. 352-355

詳細
抄録

背景 : 多発性骨髄腫 (骨髄腫) において腫瘍細胞が体腔液中に出現することはまれであるが, 多数の腫瘍細胞を胸水中に認めた骨髄腫の 2 例を経験したので報告する.
症例 : 症例 1 : 54 歳, 男性. 両側上顎洞, 背部腫瘤にて発症した IgG 型骨髄腫. 胸水中に好塩基性の細胞質と核周明庭を認める, 類円形の成熟型の骨髄腫細胞が多数出現し, 形質芽球型の骨髄腫細胞が混在していた. 症例 2 : 53 歳, 男性. IgA 型骨髄腫の再発後に左胸水が認められた. 好塩基性の細胞質と核周明庭を認める, 類円形の骨髄腫細胞が多数出現していた. 明瞭な核小体を認め, 核の大小不同, 核型不整を認める細胞や, 2 核を含む多核細胞も混在していた.
結論 : 骨髄腫の中で胸水中に腫瘍細胞が出現するのはまれであるが, Papanicolaou 染色標本で核クロマチンの性状や核小体の観察を行い, Giemsa 染色標本で好塩基性の細胞質や核周明庭など骨髄腫細胞としての特徴的な所見を確認することで, 診断精度の向上につながると考えた.

著者関連情報
© 2010 公益社団法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top