日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
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原著
胆管擦過細胞診における検体処理法の改良とその細胞像
—正診率向上を目標に—
稲山 久美子本田 知子若狭 朋子新宅 雅幸岡部 純弘
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2012 年 51 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

目的 : 細胞の回収率を向上させて胆道領域の正診率を向上させる.
方法 : 当院で内視鏡的逆行性胆管膵管造影 (endoscopic retrograde cholangiopancreatography : ERCP) が行われた 52 例について, 従来の擦過細胞診に加えて, ハンクス液を用いたブラシ洗浄液とブラシ外筒チューブ内容液から細胞を回収した. それぞれの検体について集塊数, 細胞像, さらに細胞診断における感度, 特異度を比較検討した.
成績 : 検体不良による判定不可症例は, 擦過検体のみでは 17.6%であった. ブラシ洗浄液および外筒チューブ内容液を併用することにより, 判定不能は 2%となった. 細胞像については, ハンクス液を用いたブラシ洗浄液の細胞は細胞質の膨化を軽度認めた. 外筒チューブ内容液では細胞変性はほとんどなかった. ブラシ洗浄液, 外筒チューブ内容液では大型組織集塊が回収され, 立体的な組織構築も観察することができた. 三法を併用することにより感度は 92% (改良前 71%), 特異度 100% (改良前 70%) と改善した.
結論 : ハンクス液を用いたブラシ洗浄液と外筒チューブ内容液から変性の少ない細胞を大量に回収することができ, 正診率が向上した.

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© 2012 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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