2012 年 51 巻 6 号 p. 409-414
背景 : 浸潤性微小乳頭癌 (invasive micropapillary carcinoma, 以下 IMPC と略記) は全乳癌に対する発生頻度は約 3%で, 男性症例での報告はきわめて少ない. 男性乳腺に発生した IMPC を経験したので細胞学的および病理学的検討を加え報告する.
症例 : 56 歳, 男性. 右乳房腫瘤を自覚し近医受診. 精査を勧められ当院乳腺外来を受診. 穿刺吸引細胞診所見では背景は清明で, 多数の乳管上皮細胞集塊が認められた. 細胞集塊は 2 種類みられ, 結合性の低下した集塊と乳頭状に増殖した結合性の良い集塊に分けられた. 後者の集塊は, 辺縁が平滑で細胞質により縁取られ, けばだち状の所見を有していた. 組織学的には IMPC の典型的な像のほか, 乳頭腺管癌や硬癌のような通常型の浸潤性乳管癌の部分もみられたが, 病変の約 2/3 が微小乳頭癌成分で占められていたため, 組織型は IMPC と診断された.
結論 : 細胞診で辺縁部が細胞質によって縁取られ, けばだち状の所見がみられる集塊が少量でも認められた場合は, IMPC を鑑別に加えることができると考えられた. IMPC は悪性度の高い疾患であることから本組織型の存在を推定することは臨床上有用であると考えられた.