日本臨床細胞学会雑誌
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症例
細胞診異常の約 2 年後に診断しえた卵管類内膜腺癌の 1 例
今村 紘子萩原 聖子兼城 英輔矢幡 秀昭小川 伸二小林 裕明加来 恒壽
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2012 年 51 巻 6 号 p. 435-440

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抄録

背景 : 卵管癌はまれな婦人科悪性腫瘍で, その組織型は大部分が漿液性腺癌であり類内膜腺癌の報告は少ない. また, 卵管癌が術前に診断されることはまれで, 術前に子宮頸部細胞診異常を認めることもあると報告されている.
症例 : 64 歳, 女性. 1 経妊 1 経産. 数日前の不正性器出血を主訴に前医を受診した. 子宮頸部および内膜細胞診で腺系の異常を認め当科を初診した. 明らかな腫瘤性病変はなく, 当科で再検した細胞診は悪性所見を認めず, 精査のため子宮頸部円錐切除術を施行するも悪性所見を認めなかった. 外来で経過観察としたが, 初診後 1 年 2 ヵ月で骨盤内に嚢胞性腫瘤を認めその 7 ヵ月後にそれに連続して充実性腫瘤が出現した. 卵管癌を疑い開腹術を行ったところ, 腫大した右卵管を認めた. 術中迅速病理検査で adenocarcinoma の結果であり卵巣癌に準じた手術を行った. 術後病理検査により endometrioid adenocarcinoma と診断した.
結論 : 細胞診で異常な腺系細胞の出現後約 2 年経過して診断しえた, まれな卵管類内膜腺癌の 1 例を経験したので報告した. 子宮に明らかな病変を認めない細胞診異常の症例においては, 卵管癌も鑑別の一つとして念頭に置く必要がある.

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© 2012 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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