日本臨床細胞学会雑誌
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症例
腎臓の悪性類上皮型血管筋脂肪腫の 1 例
遠藤 由香利永見 光子大野 千恵子桑本 聡史野坂 加苗廣岡 保明堀江 靖
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2013 年 52 巻 4 号 p. 335-340

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抄録

背景 : 腎類上皮型血管筋脂肪腫 (epithelioid angiomyolipoma : 以下 eAML) は通常の血管筋脂肪腫 (angiomyolipoma : AML) とは異なり, 再発や転移をきたし, 悪性の経過をたどることがある. 今回われわれは捺印細胞診を併用して診断した eAML の 1 例を経験したので文献的考察を加え報告する.
症例 : 20 歳代, 男性. 肉眼的血尿を主訴に当院を受診. 画像検査にて左腎上極に 4 cm 大の境界明瞭な充実性腫瘤を認め, 左腎臓摘出術が施行された. 腫瘍捺印細胞標本では壊死性背景に細顆粒状の豊富な細胞質を有する大小の異型細胞が多数出現し, 巨大核, 分葉状核, 多核, 核内細胞質封入体が観察された. 組織像では類上皮様の異型細胞の増生が認められた. 免疫組織化学的にこれらの細胞は Melan-A, HMB-45, α-SMA に陽性を示し, eAML と診断された.
結論 : eAML の組織および細胞所見は腎細胞癌や肉腫と類似し診断に苦慮する場合が多い. しかし, 顆粒状の豊富な細胞質を有する等の細胞所見を認めた際は, 本症例を鑑別にあげ, 適切な免疫組織化学的検索を行うことで確定診断が可能であると考えられた.

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© 2013 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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