日本臨床細胞学会雑誌
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症例
腟転移をきたした膵癌の 1 例
中村 路彦田中 智人芦原 敬允棟方 哲藤田 茂樹大道 正英
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2013 年 52 巻 4 号 p. 360-363

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抄録

背景 : 腟悪性腫瘍の多くは転移性であり, 診断には, 既往歴, 既往の原発巣の細胞像との比較も必要である. 子宮, 付属器からの転移が最も一般的であるが, 今回われわれは腟転移をきたした膵臓癌を経験した.
症例 : 74 歳. 性器出血を主訴に当科を受診した. 膵体部癌の診断で 2 年前に膵体尾部切除術および幽門側胃合併切除術を施行されており, 最終診断は膵臓癌 tubal adenocarcinoma pT3N1MX であった. 術後補助化学療法施行後, 再発を認めたため second line の化学療法を施行したが効果は認めず経過観察となっていた. 内診にて腟壁に径 1 cm 程度の潰瘍形成を認め, 同部位の細胞をブラシで擦過し液状処理細胞診標本を作製した. パパニコロウ染色で腺系の異型細胞を認めたため, 余剰検体に免疫染色を行い, CK7, CK20, CEA および CA19-9 が陽性であった.
結論 : 免疫細胞学的検査の結果と臨床経過から膵臓癌の腟転移と診断した. 確定診断は組織診によってなされるのが原則であるが, 出血, 感染のリスクを伴う場合, 免疫細胞学的検査を合わせた細胞所見は診断の手助けとなりうる. また, 液状処理検体 (Liquid based cytology : LBC 検体) を使用することにより, 余剰検体から容易に免疫染色を追加することができた.

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© 2013 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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