日本臨床細胞学会雑誌
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原著
甲状腺癌の分化度推定マーカーとしてのCD26/DPP IV 活性染色の有用性
—低分化癌を中心に—
清山 和昭荒武 八起白濱 幸生寺田 一弥佐藤 信也丸塚 浩助佐藤 勇一郎年森 啓隆栗林 忠信
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2013 年 52 巻 5 号 p. 422-427

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抄録

目的 : 穿刺吸引細胞診による甲状腺癌の組織型分化度推定における CD26/Dipeptidyl (amino) peptidase IV (DAPIV, DPPIV : CD26/DPPIV活性染色) の有用性について検討した.
方法 : 甲状腺乳頭癌, 濾胞癌, 低分化癌の穿刺吸引細胞診標本を対象に, 細胞学的所見ならびに CD26/DPPIV活性染色について評価した.
成績 : 甲状腺癌における CD26/DPPIV活性染色パターンには, apical pattern (APP), diffuse pattern (DFP), dot pattern (DTP) および mixed pattern (MXP) があり, 乳頭癌 100 例のうち, APP が 24 例 (24%), DFP が 51 例 (51%), MXP が 25 例 (25%) であった. 濾胞癌 5 例においては, 全例が APP であった. これに対し低分化癌 23 例では, APP が 3 例 (13.0%), DFP が 7 例 (30.4%), DTP が 4 例 (17.4%) および MXP が 9 例 (39.1%) あった. DTP は乳頭癌, 濾胞癌にはなく, 低分化癌のみにみられ, DTP を示した 4 例は低分化成分が主体であった. DTP を示した 4 例の細胞所見ではいずれも細胞採取量が多く, 4 例中 3 例は乳頭癌と, 1 例は濾胞性病変と判定した.
結論 : 術前のパパニコロウ染色の細胞所見から低分化癌, 特に低分化成分の少ない症例における組織型の推定は困難であった. しかしながら, CD26/DPPIV活性染色において, 低分化癌のみに DTP を示したことから, 本染色パターンは低分化癌の組織型に特異的なものと考えられ, 甲状腺細胞診の術前診断, 特に低分化成分の有無を推定する補助的方法として有用であると思われた.

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© 2013 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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