日本臨床細胞学会雑誌
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症例
肺転移巣より診断しえた胞巣状軟部肉腫の 1 例
島田 ゆうか三宅 真司五百部 浩昭長嶋 洋治松林 純大城 久池田 徳彦長尾 俊孝
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2014 年 53 巻 1 号 p. 28-34

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抄録
背景 : 胞巣状軟部肉腫 (alveolar soft part sarcoma, ASPS) は若年成人の四肢に好発するまれな悪性腫瘍である. 今回, 肺転移を契機に発見された大腿部原発 ASPS の 1 例を経験したので報告する.
症例 : 35 歳, 女性. 両肺に多発腫瘤を認め, 胸腔鏡下肺部分切除術が施行された. 肺腫瘤割面の捺印細胞診標本では, 類円形核と大型の核小体を有する異型細胞が結合性の緩い細胞集団として, あるいは孤立性に多数出現していた. これらの異型細胞は豊富な細胞質を伴い, 細胞質内には針状の結晶構造物を含んでいた. また, 免疫細胞化学的には transcription factor for immunoglobulin heavy-chain enhancer3 (TFE3) が異型細胞の核に陽性であった. これらの細胞学的所見より, ASPS の肺転移が示唆された. 病理組織学的検索でも ASPS に合致する所見が得られた. 電子顕微鏡的には細胞質内に格子状配列を示す結晶が認められた. さらに, RT-PCR 法にて ASPL-TFE3 融合遺伝子I型転写産物が検出された. その後の精査で, 右大腿軟部組織に原発巣が発見された.
結論 : ASPS では転移巣が原発巣に先行してみつかることがしばしばあるが, 転移巣の細胞診材料でも診断を推定することが可能と考えられた.
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© 2014 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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