日本臨床細胞学会雑誌
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症例
子宮内膜細胞診が陽性であった副甲状腺ホルモン関連蛋白 (PTHrP) 産生型の卵巣明細胞腺癌の 1 例
玉手 雅人松浦 基樹竹浪 奈穂子幅田 周太朗郷久 晴朗田中 綾一早川 修齋藤 豪
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2014 年 53 巻 2 号 p. 120-125

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抄録

背景 : ホルモン産生型高 Ca 血症を伴う卵巣明細胞腺癌はまれであり, 予後不良である. 総合的な検査から周術期管理を行う必要がある.
症例 : 症例は閉経後の経産婦, 不正出血と意欲低下を主訴に来院した. 画像検査にて造影効果を示す隆起性結節を伴った 12 cm の卵巣腫瘍を認め, 子宮内膜細胞診では腫瘍性の背景が欠如した悪性細胞の集塊が存在したため, 卵巣由来の悪性腫瘍を疑った. 腫瘍マーカーの上昇はなかったが, 高 Ca 血症と副甲状腺ホルモン関連蛋白 (以下, PTHrP) の上昇を認めた. 血清 Ca 値を補正後に根治術を行い, 卵巣明細胞腺癌 stageIIc と診断し, 術後化学療法を施行した. PTHrP は正常化し, 病理学的免疫染色により卵巣癌上皮の細胞質に PTHrP の局在が示唆された. 現在, 再発徴候はない.
結論 : 卵巣癌において子宮内膜細胞診が陽性となる症例を散見するが, 細胞像・臨床背景をみて原発巣や組織型を推測していくことが重要である. PTHrP 産生型の卵巣癌は予後不良とされているが, 本例のように細胞診・血液検査から診断し, 術前から積極的な治療を開始することが予後の改善に寄与するかもしれない.

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© 2014 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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