日本臨床細胞学会雑誌
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症例
縦隔に発生した卵黄嚢腫瘍の 1 例
南 智也荻原 英里松木 慎一郎高垣 和代石田 由香里駒井 隆夫中島 直樹鷹巣 晃昌
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2014 年 53 巻 3 号 p. 224-228

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抄録

背景 : 卵黄嚢腫瘍 (yolk sac tumor : 以下, YST) は胚細胞腫瘍の一亜型で若年層以下の性腺に発症し, AFP (alpha fetoprotein) を産生する比較的まれな疾患であるが, ごくまれに性腺外に発生する. われわれは, 縦隔に生じた YST の 1 例を経験したので報告する.
症例 : 20 歳代後半, 女性. 胸部 X 線および CT にて左前縦隔に巨大腫瘤を認めたため, 腫瘤穿刺吸引細胞診を施行し, 未分化な悪性腫瘍と推定. その際に作製したセルブロックにて特殊染色を実施し, YST と診断した. その後, 細胞診標本を詳細に再検討したところ, 硝子球 (hyaline globules : 以下, HG) や “Balloon animal”-like cell cluster (動物風船様細胞集塊 : 以下, “BA”-like cluster) と呼ばれる細胞集塊など YST に特徴的な細胞所見を少数ながら認めた. 患者は化学療法後, 腫瘍摘出術が施行された. 摘出腫瘍組織は壊死塊を呈した. 術後経過良好である.
結論 : YST の細胞診断において, HG や “BA”-like cluster などの細胞所見は診断的価値の高い所見であり, これらの所見を把握することは重要である. しかし, これらの細胞所見だけでは, 組織型の推定や類似疾患との鑑別が困難な場合がある. セルブロックを有効に活用し, HE 染色や免疫染色結果と臨床所見を総合することにより, 正しい診断に達することができると考える.

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© 2014 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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