日本臨床細胞学会雑誌
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症例
喀痰細胞診にて虫卵を認めた肺吸虫症の 2 例
岡本 秀雄浦本 博三村 裕子星田 義彦
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2014 年 53 巻 4 号 p. 292-297

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抄録

背景 : 肺吸虫症は淡水カニやイノシシの生肉の摂食を介してヒトに感染し, 肺に肉芽腫性病変を形成する寄生虫疾患で, 近年のグルメ志向の高まりや社会のグローバル化により, 細胞診領域において少ないながらも遭遇する機会がある. 今回われわれは喀痰細胞診にて虫卵を認めた肺吸虫症の 2 例を経験したので報告する.
症例 : 症例 1 : 40 歳代, 大阪在住中国人女性. 咳嗽, 喀痰, 発熱を主訴に当院受診. 加療中に気胸を発症し右中葉部分切除術を施行. 切除肺より肺吸虫を検出した. 術前の喀痰細胞診標本を見直すと虫卵が確認できた. 症例 2 : 40 歳代, 沖縄, グアムへの旅行歴のある日本人女性. 咳嗽を主訴とし胸部 X 線異常陰影を指摘され当院を受診. 末梢血好酸球比率, 血清 IgE 値の上昇, 血清抗ウエステルマン肺吸虫抗体陽性を認めた. 喀痰細胞診標本中に肺吸虫卵が数個確認でき確定診断にいたった. 症例 1 の経験が症例 2 での虫卵の検出を容易にした. さらに集卵法を実施し, 虫卵の詳細な観察には集卵法が有用であった.
結論 : 細胞診業務において, 肺吸虫などの寄生虫に対する知識と経験が重要である.

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