日本臨床細胞学会雑誌
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症例
左副腎に発生した骨髄脂肪腫の 1 例
川口 翔島崎 英幸織田 智博高橋 宏美遠藤 久子中西 邦昭玉井 誠一
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2014 年 53 巻 4 号 p. 298-302

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抄録

背景 : 骨髄脂肪腫は主に副腎に発生する造血組織と脂肪組織が混在する良性腫瘍様病変である. 無症状のため発見されにくいが, 近年では画像診断技術の向上により偶発的な発見例が増加している. 今回われわれは, computed tomography (CT) などの画像情報をもとに, 細胞診により診断可能であった 1 例を経験したので報告する.
症例 : 38 歳, 女性. 当院口腔外科にて粘表皮癌の術後経過観察中, CT で左腎上極に巨大な骨髄脂肪腫が疑われる腫瘤が認められた. 手術時に摘出された腫瘤の内容物が細胞診に提出された. 細胞診では, 赤芽球, 骨髄芽球, リンパ球, 骨髄巨細胞などの造血系細胞が認められた. 脂肪細胞は認められなかったが, 画像情報などをもとに骨髄脂肪腫の部分像と考えられた.
結論 : 本例の細胞診は脂肪細胞が認められず, 骨髄脂肪腫の部分像がみられるのみであったが, 臨床情報を考慮し最終的な判断にいたった. 本疾患を細胞診で観察する機会はまれであるが, 副腎腫瘤の細胞診においてその存在を念頭に置き, 種々の造血系細胞からなる特徴的な細胞像が本疾患の診断根拠となると思われる.

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© 2014 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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