日本臨床細胞学会雑誌
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症例
粘液化生を伴った乳管腺腫の 1 例
佐藤 明宮西 智恵横山 智子安毛 直美兼近 典子
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2016 年 55 巻 1 号 p. 13-19

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抄録

背景 : 乳管腺腫は異型アポクリン化生細胞が多量に採取されるため過剰診断しないよう警告されてきたが, 多量の粘液分泌がみられることは非常にまれである.
症例 : 患者は 60 歳代, 女性. 検診のマンモグラフィーで右 B 領域にカテゴリー 3 の腫瘤が発見された. 穿刺吸引細胞診では稀薄ないし濃厚な多量の粘液, 泡沫細胞, 壊死物質を背景に, 充実重積状, 腺房状あるいはシート状パターンの細胞集塊と孤在性の腫瘍細胞が多数, 採取された. 少数の篩状や乳頭状パターンの細胞集塊もみられた. 腫瘍細胞は比較的 N/C 比の低い均一な卵円形核と, 淡橙色の細胞内粘液を有するものが多く, 核が偏在する杯細胞も出現していた. 粘液癌が疑われた. 手術材料の組織診断では腫瘍細胞内粘液と粘液を貯留する囊胞状腺管がみられる, 粘液化生を伴った乳管腺腫であった.
結論 : 本例は穿刺吸引細胞診で多量の粘液が採取され, 粘液化生を伴った乳管腺腫であった. 細胞診では粘液癌や Mucocele-like tumor との鑑別が問題となった.

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