日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
症例
胆囊癌根治的切除後に発見された前立腺癌の肺の孤在性転移の 1 例
二宮 慶太安原 裕美子小山 奈津子豊山 浩祥
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 55 巻 4 号 p. 263-267

詳細
抄録

背景 : 前立腺癌のリンパ節・骨転移を伴わない肺単発転移は非常にまれであり, さらに肺転移から発見される前立腺癌の報告はきわめてまれである. 今回, 肺腫瘍が前立腺癌発見の契機となった 1 例を経験したので報告する.

症例 : 75 歳, 男性. 胆囊癌根治的切除後の経過観察中に左肺下葉に小結節影を指摘され, 転移疑いに対して肺部分切除術が施行された. 捺印細胞所見では小型で均一な異型細胞からなるシート状集塊として出現し, 明瞭な核小体を 1 個有する. 組織学的には間質成分は伴わず明瞭な核小体を有する均質な異型細胞の篩状増殖からなり, 原発性肺癌, 胆囊癌の転移としてはともに非典型的であり, 他臓器からの転移の可能性を報告した. 術後全身検索にて前立腺癌が疑われ, 前立腺針生検の結果, 腺癌が確認された. 前立腺癌と肺腫瘍は非常に類似しており, 前立腺癌の肺転移と判断された. その後の全身検索の結果からも今回切除された肺以外に転移巣は確認されていない.

結論 : 細胞診のみでは原発性肺癌と転移性肺癌との鑑別は困難な例が多く, 本例はオカルト癌であったことに加え, 臨床的に既往の胆囊癌の転移が第一に考えられていたことが, より診断を難しくしていた症例であった.

著者関連情報
© 2016 公益社団法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top