日本臨床細胞学会雑誌
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55 巻 , 4 号
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原著
  • 今井 宏樹, 仲村 武, 岸本 浩次, 野﨑 真仁, 牧野 純, 小山 剛司, 渡邊 睦子, 大池 信之, 梅本 沙代子, 河野 尚美
    2016 年 55 巻 4 号 p. 215-223
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/12
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    目的 : バーキットリンパ腫 (BL) の脂肪空胞は知られているが, 他の悪性リンパ腫においても細胞質内空胞を認めることがある. 悪性リンパ腫の空胞出現率と SudanⅢ染色, adipophilin 免疫組織化学から脂肪の有無や組織型との関連を検討した.

    方法 : 良悪性 101 例の組織捺印標本のギムザ染色, adipophilin の免疫組織化学を行った. 一部の症例は SudanⅢ染色を行った.

    成績 : 空胞出現率は良性で 10%以下, 20%以上は悪性リンパ腫であった. SudanⅢ染色は BL, びまん性大細胞 B 細胞リンパ腫 (DLBCL), 未分化大細胞リンパ腫 (ALCL) で陽性細胞を認めた. Adipophilin 陽性率は良性で 20%以下, 高い症例は悪性リンパ腫であった.

    結論 : 染色から空胞は, 脂肪空胞が存在する. 空胞を 20%以上認める症例は悪性リンパ腫を示唆する. Adipophilin 陽性率が高い場合, 悪性リンパ腫を示唆する. BL, DLBCL, ALCL, 成人 T 細胞性白血病/リンパ腫 (ATLL) において, 空胞を多くもつ傾向が示された. 細胞診断は細胞形態の特徴に加え, 空胞の有無が組織型推定に有用である.

  • 土田 秀, 布瀬川 卓也, 神山 晴美, 山崎 真美, 髙田 温子, 中里 宜正, 飯島 美砂, 鹿沼 達哉, 小島 勝
    2016 年 55 巻 4 号 p. 224-230
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/12
    ジャーナル 認証あり

    目的 : リンパ節の穿刺吸引細胞診に迅速細胞診検査を併用することで, 確定診断を目的とした組織採取を迅速に施行することが可能か検討を行った.

    方法 : 頸部リンパ節の穿刺吸引細胞診が行われた後にリンパ節摘出術が施行された 27 例を対象とし, 迅速細胞診検査の導入前後で穿刺吸引細胞診施行からリンパ節摘出までの日数, 細胞診と組織診の結果の比較を行った.

    成績 : 穿刺吸引細胞診施行からリンパ節摘出までの日数の比較は, 導入後の群で優位に短期間であった. また, 細胞診と組織診の結果の比較では, 導入前の正診率が 90%で導入後の正診率が 88.2%であった.

    結論 : リンパ節の穿刺吸引細胞診に迅速細胞診検査を併用することで, 必要に応じ迅速な組織採取が施行され, 迅速な治療に繋がると思われた.

  • 山﨑 利城, 徳山 宣, 佐藤 麻依, 平川 靖那, 寺井 謙介, 平山 美佐子, 山口 みはる, 北村 真, 笹井 大督, 蛭田 啓之
    2016 年 55 巻 4 号 p. 231-238
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/12
    ジャーナル 認証あり

    目的 : 細胞診標本において濾胞性リンパ腫 (follicular lymphoma Grade 1-2, FL G1-2) の腫瘍細胞は, 非腫瘍性病変との鑑別に苦慮する場合がある. そこで今回われわれは, BCL2 と BCL6 との二重免疫染色を考案し有用性を検討した.

    方法 : 2000~2016 年の 16 年間に当院で手術され, 確定診断された悪性リンパ腫 35 例, 非腫瘍性病変 15 例, 計 50 例の細胞診標本を対象とし, 二重免疫染色を行った.

    成績 : 二重に染まっている細胞を陽性と判断した結果, FL G1-2 は 8 例すべて, B 細胞性リンパ腫全体では 29 例中 22 例が陽性を示した. これに対し非腫瘍性病変は 15 例すべて陰性であった. T 細胞性リンパ腫, 古典的ホジキンリンパ腫は陰性を示した.

    結論 : BCL2 および BCL6 を組み合わせた免疫染色は, FL G1-2 の診断において強力な補助診断ツールであることが示された.

症例
  • 大澤 久美子, 青木 智章, 渡部 玲子, 得平 道英, 阿部 佳子, 新井 栄一, 木崎 昌弘, 田丸 淳一
    2016 年 55 巻 4 号 p. 239-244
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/12
    ジャーナル 認証あり

    背景 : びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫 (diffuse large B-cell lymphoma ; DLBCL) のまれな細胞形態である紡錘形細胞亜型 (spindle cell variant ; Sp) を経験したので報告する.

    症例 : 50 歳代, 女性. 腹痛を主訴に近医受診し, 画像検査において悪性リンパ腫が疑われ当院を紹介された. 表在リンパ節は触知せず, CT では腹部正中より左側を優位に 1~4cm 大の腸間膜リンパ節腫大が多数認められ, 確定診断のため開腹リンパ節生検が施行された. 穿刺吸引細胞診では, 典型的な形態ではないものの悪性リンパ腫を思わせる細胞像であったが, 病理組織学的には紡錘形細胞からなり, 悪性リンパ腫以外の悪性間葉系腫瘍が疑われ, 免疫形質発現の検索にて, CD20 (+), CD10 (−), BCL6 (−), MUM-1 (+) であり, non-GCB type で, かつ病変がリンパ節に限局し, 反応性の筋線維芽細胞や, T リンパ球, 組織球浸潤が比較的乏しく Sp としてはきわめてまれな性質をもつ症例と診断された.

    結論 : Sp-DLBCL は非常にまれな悪性リンパ腫のため, 病理組織像だけでは診断が難しい疾患であり, 細胞像を参考に免疫染色にて腫瘍細胞の起源を証明することが診断には重要と思われた.

  • 吉野 龍一, 奥 和子, 杉生 憲二, 山根 三千秋, 原 沙由美, 後藤 孝吉, 永野 輝明, 中塚 伸一
    2016 年 55 巻 4 号 p. 245-249
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/12
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    背景 : Syncytial variant (SV) は古典的ホジキンリンパ腫 (CHL) 結節硬化型のまれな亜型である. 大型細胞がシート状に出現し, 上皮性腫瘍との鑑別が問題となる場合がある.

    症例 : 90 歳代, 女性. 主訴は右腋窩リンパ節腫大. 乳癌のリンパ節転移を疑うも, 画像的に原発巣は認めなかった. 潜在性乳癌を疑ってリンパ節穿刺細胞診を施行したが, 判定困難であった. 確定診断のため腋窩リンパ節郭清が施行された. 郭清リンパ節の捺印標本では小型リンパ球, 好中球, 好酸球を背景に明瞭な核小体を有した大型核の細胞を孤立散在性もしくは結合性を有した集塊として認め, 上皮性腫瘍が疑われた. 組織学的には線維性硬化を伴って, 結節状, シート状の大型細胞集団を認め, lacunar 細胞を多数認めた. 免疫染色は cytokeratin (−), LCA (−), CD30 (+), CD15 (+) を示した. 以上より, 最終診断は CHL 結節硬化型 SV とした.

    結論 : SV は通常型の CHL と異なり, 大型異型細胞が多数, 集塊状, シート状に出現することがある. 上皮性腫瘍の転移との鑑別がしばしば問題となるため, 本疾患の存在を念頭において, 慎重に推定診断を行う必要がある.

  • 佐藤 由美, 落合 広美, 小林 由美子, 泉田 佳緒里, 栗原 アツ子, 若木 邦彦
    2016 年 55 巻 4 号 p. 250-255
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/12
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    背景 : 近年, メトトレキサート (MTX) は, 関節リウマチ (RA) の治療薬として広く用いられ, 使用頻度は増加している. しかし, 副作用としてのリンパ腫の発生も多く報告されるようになった. 今回私たちは, 左膝関節滑膜に発生した MTX 関連リンパ増殖性疾患 (MTX-LPD) のまれな 1 例を経験したので報告する.

    症例 : 62 歳, 女性. 9 年前に RA 発症, 8 年前より MTX 投与開始. 8 ヵ月前より左膝関節の腫脹と疼痛を認めた. 関節液細胞診にて MTX-LPD が疑われ, 滑膜切除術が行われた.

    結論 : 発生部位として非常にまれな滑膜に限局した MTX-LPD の 1 例を経験した. 細胞診検体よりセルブロックを作製し, 確定診断に近づくことができた症例であった. 加えて, 新潟県立リウマチセンターで発生した MTX-LPD 10 例を検討し, 若干の考察を加えて報告する.

  • 甘利 保子, 大谷 方子, 高瀬 章子, 菊地 美保, 富岡 理恵, 腰高 典子, 田辺 美樹子, 稲山 嘉明
    2016 年 55 巻 4 号 p. 256-262
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/12
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    背景 : メルケル細胞癌 (Merkel cell carcinoma, 以下 MCC) はメルケル細胞由来のまれな神経内分泌腫瘍と考えられている. 好発部位は頭頸部, 日光暴露の皮膚もしくは皮下結合組織であるがリンパ節転移で発見されることも多い. われわれは, 皮膚病変がなく, 診断に苦慮した耳下腺内リンパ節の MCC の症例を経験したので報告する.

    症例 : 70 歳代, 女性. 約 15 ヵ月前に右頸部腫瘤を自覚した. 悪性リンパ腫を疑われたため, 右耳下腺リンパ節の穿刺吸引細胞診および生検が施行された. 細胞診では小型の異型細胞が孤立散在性に出現しており, 悪性リンパ腫を疑ったが, 免疫組織化学染色をふまえた組織所見から MCC と診断した. 皮膚の原発巣は認められず, 現在まで再発は認めていない.

    結論 : MCC の細胞像は, N/C 比の高い小型類円形の細胞が孤立散在性および, 一部上皮様集塊にて出現する. さらに核クロマチンが微細顆粒状~すりガラス状という独特の細胞所見は悪性リンパ腫や他の神経内分泌腫瘍との鑑別に有用である.

  • 二宮 慶太, 安原 裕美子, 小山 奈津子, 豊山 浩祥
    2016 年 55 巻 4 号 p. 263-267
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/12
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    背景 : 前立腺癌のリンパ節・骨転移を伴わない肺単発転移は非常にまれであり, さらに肺転移から発見される前立腺癌の報告はきわめてまれである. 今回, 肺腫瘍が前立腺癌発見の契機となった 1 例を経験したので報告する.

    症例 : 75 歳, 男性. 胆囊癌根治的切除後の経過観察中に左肺下葉に小結節影を指摘され, 転移疑いに対して肺部分切除術が施行された. 捺印細胞所見では小型で均一な異型細胞からなるシート状集塊として出現し, 明瞭な核小体を 1 個有する. 組織学的には間質成分は伴わず明瞭な核小体を有する均質な異型細胞の篩状増殖からなり, 原発性肺癌, 胆囊癌の転移としてはともに非典型的であり, 他臓器からの転移の可能性を報告した. 術後全身検索にて前立腺癌が疑われ, 前立腺針生検の結果, 腺癌が確認された. 前立腺癌と肺腫瘍は非常に類似しており, 前立腺癌の肺転移と判断された. その後の全身検索の結果からも今回切除された肺以外に転移巣は確認されていない.

    結論 : 細胞診のみでは原発性肺癌と転移性肺癌との鑑別は困難な例が多く, 本例はオカルト癌であったことに加え, 臨床的に既往の胆囊癌の転移が第一に考えられていたことが, より診断を難しくしていた症例であった.

  • 小島 啓子, 刀稱 亀代志, 熊谷 直哉, 星合 桂太, 黒瀬 顕
    2016 年 55 巻 4 号 p. 268-273
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/12
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    背景 : 肺胞蛋白症 (PAP) は肺胞腔内, 終末気管支内にサーファクタント由来物質が異常貯留をきたす比較的まれな疾患である. 今回われわれは気管支肺胞洗浄液 (BALF) 細胞診で PAP と診断しえた 4 例の BALF の性状ならびに細胞学的所見を比較検討した.

    症例 : 20~60 歳代の 4 人が CT で PAP が疑われ, 確定診断目的に BALF 細胞診と経気管支肺生検が施行された. BALF の外観は症例間で差があり, 軽度~高度の白濁を呈していた. 細胞診ではいずれも微細な顆粒状物質, 不定形の無構造物質および泡沫マクロファージが認められ, それぞれの出現量は症例間で異なっていた. いずれも過ヨウ素酸シッフ反応陽性ならびに免疫細胞化学的に surfactant protein A 陽性であり PAP と細胞診断した. BALF 中の泡沫マクロファージは重症例では減少していた. また組織診でも肺胞腔内に好酸性物質の貯留と泡沫マクロファージを認め PAP と診断した.

    結論 : BALF の外観ならびに顆粒状物質, 無構造物質および泡沫マクロファージによる BALF 細胞診は PAP の診断に有用である. さらに泡沫マクロファージの出現量は重症度との関連で重要である.

  • 小林 広昌, 松本 慎二, 青木 光希子, 濵﨑 慎, 井上 亨, 鍋島 一樹
    2016 年 55 巻 4 号 p. 274-279
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/12
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    背景 : Papillary glioneuronal tumor (PGNT) は, 星細胞の偽乳頭状構造と乳頭間の神経細胞のシート状増殖を特徴とする良性の神経グリア混合腫瘍であり, 2007 年 WHO 脳腫瘍分類で grade I に分類されている. これまでに PGNT における細胞診所見に言及した報告はない.

    症例 ; 32 歳, 女性. 頭痛の精査で右側頭葉の腫瘍性病変を認め入院となった. 右側頭開頭腫瘍摘出術を施行, 術中細胞診では, 血管周囲性配列を示し突起を有する星茫状細胞と, その周囲に分布する神経節および神経細胞の 3 種類の細胞を認め, glioneuronal tumor が疑われた. 病理組織所見では, 硝子化した血管を取り囲むように星細胞様細胞が偽乳頭状に増殖し, 偽乳頭状構造間には明るい類円形核と明瞭な核小体を有する小型~中型の神経細胞様細胞のシート状増殖を認め, PGNT と診断した. 振り返ると細胞診にも上記のごとく特徴的な所見が得られており, PGNT の術中診断も可能と考えられた.

    結論 ; 本例は, 術中細胞診が PGNT の診断に大きく寄与した貴重な 1 例であった. まれな症例においても, その特徴を理解しておくことが重要である.

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