2017 年 56 巻 6 号 p. 289-296
目的 : 悪性中皮腫, 肺腺癌との鑑別が困難であった乳癌再発症例を経験した. 診断における形態学的, 免疫組織化学的なピットフォールについての検討とあわせて報告する.
方法 : 28 年前に乳癌の手術歴のある, 右側悪性胸水をきたした 62 歳の女性症例を報告する. さらに 16 例の乳腺浸潤性小葉癌および 24 例の浸潤性乳管癌について免疫組織化学的検討を追加した.
成績 : 胸水穿刺細胞診では形態学的に悪性中皮腫が疑われた. Cell block 作製後の免疫染色で腫瘍細胞は, cytokeratin 7, EMA, calretinin, CEA, estrogen receptor 陽性, cytokeratin 20, MOC-31, cytokeratin 5, D2-40, WT-1, CD146, progesterone receptor, HER2, GCDFP-15, TTF-1, napsin A 陰性であった. これらの結果からは確定診断にはいたらず, 最終的に転院先で施行された胸腔生検により, 腫瘍は 28 年前に切除された右側浸潤性小葉癌の再発と診断された.
追加で行った検討では, 乳癌のうちおのおの浸潤性小葉癌 16 例中 3 例 (19%), 浸潤性乳管癌 24 例中 12 例 (50%) が MOC-31 陽性, おのおの 3 例 (19%), 2 例 (8%) が calretinin 陽性であった.
結論 : 悪性胸水における悪性中皮腫, 原発性肺腺癌, 乳癌再発の鑑別診断には形態学的, 免疫組織化学的にピットフォールが存在する. 診断に際してはこれらを念頭にいれ, 既往歴と併せて慎重に鑑別することが重要である.