日本臨床細胞学会雑誌
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原著
乳腺粘液癌 (純型, type B) の液状化検体細胞診所見に関する検討
永尾 聡子前田 ゆかり皆倉 愛美北園 暢子畑中 一仁梅北 善久大井 恭代
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2017 年 56 巻 6 号 p. 283-288

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抄録

目的 : 標準化された標本作製法である液状化検体細胞診 (liquid based cytology ; LBC) 法を用いた乳腺粘液癌の細胞診断を確立する.

方法 : 2013 年 9 月から 2015 年 12 月までの間に穿刺吸引細胞診が実施され, 当院にて粘液癌純型と組織学的に確定診断された 10 例のうち, LBC 標本上に十分な上皮細胞集塊が観察された 7 例を対象とした. LBC 標本は直接塗抹後に BD サイトリッチTMレッド保存液にて針内洗浄し作製した. 検討項目は粘液・上皮細胞集塊・血管それぞれの出現様式と腫瘍細胞像である.

成績 : 組織学的に全例 type B であった. 粘液はすべての症例でさまざまな大きさに断片化してみられた. 粘液は透明感があり, ときにスジ状であった. 上皮細胞は全例小型から中型の集塊で出現し, 筋上皮細胞はみられず, 構築は充実性や孤立散在性が多かった. 全例核異型は軽度であり, 細顆粒状細胞質を有する症例が 4 例 (57.1%) に, 枝分かれする細い血管が 4 例 (57.1%) に観察された.

結論 : LBC 法で粘液癌を推定するには断片的な粘液を拾い上げることが重要であり, 細顆粒状細胞質や枝分かれする繊細な血管は診断の手助けになると考えられた.

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© 2017 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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