2018 年 57 巻 2 号 p. 120-124
背景 : 今回われわれは, 術中迅速細胞診断で診断しえた回盲部子宮内膜症を経験したので報告する.
症例 : 32 歳, 女性, 未経妊未経産. 心窩部痛を主訴とし近医を受診, 腸閉塞が疑われ当院紹介となった.
子宮内膜症で右側卵巣切除歴があり, 月経に伴い腸閉塞症状が悪化していたために, 腸管子宮内膜症による癒着性腸閉塞が疑われ回盲部切除術が施行された.
術中, 回盲部に粘膜下腫瘍を認めたため, 迅速細胞診断として穿刺吸引細胞診を施行した. 穿刺吸引細胞診中では, 孤立散在性の間質と凝集状の間質を背景に内膜腺類似細胞の集塊を認めた. 一部では化生性の変化がみられたが, 構造異型や細胞異型は認められなかった. 組織所見では, 粘膜下, 筋層内, 漿膜下組織内に内膜腺上皮と間質からなる島状組織が認められ, 回盲部子宮内膜症と考えられた. 免疫組織化学所見は, 内膜腺部分で ER (+), PgR (+), CK7 (+), CK20 (−), 内膜間質部分では CD10 (+) であり, 回盲部子宮内膜症と診断された.
結論 : 回盲部子宮内膜症の 1 例を経験した. 子宮内膜症はさまざまな臓器で発生するため, 病歴などを考慮し, 詳細なスクリーニングを行うことが重要である.