2019 年 58 巻 6 号 p. 256-265
目的 : 本調査報告の目的は, 平成 10 年度に行われた全国実態調査 (細胞診鏡検例数や細胞検査士数, 等) の追跡調査として実施されてきた定点観測の意義を明らかにすることである.
方法 : 平成 12 年度から平成 26 年度まで, 北海道, 宮城県, 熊本県に固定し, 地域別および施設別に部位別鏡検例数, 細胞検査士数および細胞診専門医数をアンケート調査し, 回答結果を集計した.
成績 : 総鏡検例数は観測当初と比べ最終的に 9.8%増加し, 特に登録衛生検査所での増加が目立った. 部位別では婦人科件数が増加し, 呼吸器件数は大幅に減少した. 総細胞検査士数は 23.7%増加し, 非常勤の比率が上昇した. 1 人当たりの 1 日の平均鏡検例数は 15.4 件から 13.6 件へと減少したが, 施設間格差が大きかった. 総細胞診専門医数は 14.6%増加したが, 常勤・臨床医数は減少していた. 細胞検査士数と細胞診専門医数の比率では施設間格差が大きかった.
結論 : 婦人科や呼吸器の鏡検例数の推移は厚生労働省によるがん検診受診率の動向と同調しており, がん検診において細胞診は重要な役割を担っていることが推定された. 一方, 鏡検施設や細胞診従事者に関する多くの課題も明らかとなった.