日本臨床細胞学会雑誌
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症例
子宮内膜細胞診が契機となり腹腔鏡下手術で診断しえた右卵巣微小漿液性境界悪性腫瘍の 1 例
長尾 瑞歩御舩 華奈辰島 純二入江 愛子堀江 靖大朏 祐治周防 加奈皆川 幸久
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2021 年 60 巻 2 号 p. 117-121

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抄録

背景 : 卵巣悪性腫瘍は, 経卵管的な腫瘍細胞の迷入により子宮内膜細胞診で異常を示すことが知られているが, 境界悪性腫瘍での報告はまれである.

症例 : 50 歳代. 前医で内膜細胞診陽性のため, 精査目的に当院を紹介受診した. 内膜細胞診では, シート状の正常萎縮内膜細胞集塊に混じて砂粒体を伴う N/C 比の高い比較的大型の異型細胞からなる小集塊をわずかに認め, 漿液性癌を疑った. しかし画像検査および子宮鏡下内膜組織検査では明らかな異常を指摘できなかった. 早期の子宮付属器腫瘍を疑い, 腹腔鏡下手術を施行した. 摘出した両側付属器に肉眼的異常は認めず, 全割による標本作製を行ったが当初の標本では明らかな腫瘍成分は見出せなかった. 術中, ダグラス窩に認められた少量の腹水の細胞診標本には内膜細胞診で認められたものと類似の異型細胞像を認め, 腺癌の存在を推定した. さらなる原発巣の検索を行ったが, 腫瘍性病変は指摘できなかった. そのためブロック標本の深切りによる再評価を行ったところ, 微小病変ながら砂粒体を伴う卵巣表層の漿液性境界悪性腫瘍を認めた.

結論 : 子宮内膜細胞診が契機となり, 卵巣微小漿液性境界悪性腫瘍の発見に至ったまれな 1 例を経験した.

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