2021 年 60 巻 6 号 p. 317-323
背景 : 分泌癌は唾液腺癌の約 10%を占める, 低悪性度の腫瘍である.
症例 : 40 歳代, 男性で, 約 3 年前より右耳前部に腫瘤が出現した. MRI 検査では右耳下腺に最大径 4 cm 大の多房性腫瘤を指摘された. 腫瘤の穿刺吸引細胞診パパニコロウ染色標本では, 背景に粘液, 出血およびヘモジデリンを貪食した泡沫状組織球を認めた. これらに混在し微小濾胞状や乳頭状, 小型のシート状集塊を認めた. それらの細胞では核は中型で偏在し, 明瞭な核小体と核クロマチンの軽度増量を伴った. ギムザ染色標本では一部の腫瘍細胞の胞体には異染性を示す分泌物を認めた. 組織学的に腫瘤は囊胞内に小型類円形腺管, 胞巣状ないし乳頭状に増殖する腫瘍であった. 免疫組織化学的に腫瘍細胞は Vimentin, GATA3, S-100, Mammaglobin, CK7 が陽性であり, 分泌癌と診断された. サンガー法によるダイレクトシーケンス解析でETV6-NTRK3融合遺伝子が検出された.
結論 : 唾液腺腫瘤の細胞診では, 乳頭状および微小濾胞状腫瘍の場合は, 推定診断の一つとして分泌癌を挙げることが重要である.