手術・生検標本, 擦過物・擦過後の喀痰検査により組織学的, 細菌学的に肺結核症と確診し得た20症例を対象に経気管支擦過法により得られた標本から類上皮細胞, ラングハンス型巨細胞の細胞形態像を把握し, これら細胞の出現頻度を検討し, 経気管支擦過細胞診による肺結核症の診断について検討した. 類上皮細胞は核形に特徴があり, ニンジン形・腎臓形・馬蹄形・西洋なし形などの細長い桿状形であった. 擦過標本中にみられる細胞の出現率をみると, 類上皮細胞は20例中11例 (55%) に認めた. 擦過物, 擦過後の喀痰中に結核菌を証明し得た5例中4例 (80%) に類上皮細胞を認めたラングハンス型巨細胞は20例中1例 (5%) に認めたのみであった. 悪性細胞と鑑別が困難な大型化した円柱上皮細胞は20例中4例 (20%) に認め, 扁平上皮化生細胞は20例中15例 (75%) に認めた. 大型化した円柱上皮細胞と悪性細胞との鑑別点は核クロマチンパターンの一様性, 刷子縁の存在が重要であった. 経気管支擦過標本中に類上皮細胞が検出された場合には肺結核症の可能性が示唆され, 類上皮細胞の検出は肺結核症の診断の一助になることが示された.