日本臨床細胞学会雑誌
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細胞診で診断できた長期経過Crohn病前癌病変の1例
吉川 美津子長廻 紘多賀須 幸男
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1982 年 21 巻 1 号 p. 76-82

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抄録

1978年以来, われわれは炎症性大腸疾患 (IBD) の悪性化早期発見の目的で細胞診を施行している. そのなかで20年の経過を持つCrohn病の直腸に発生した異型上皮巣を診断できた. 発症時17歳の女性, 回腸および左側結腸, 直腸に病巣を有するCrohn病で, 1979年直腸に小扁平隆起を発見し, その擦過細胞診でClass4の結果を得た. その後2回の細胞診でも同様の所見で, 1980年に手術された. 切除材料の組織診で, 腺腫様変化に属する前癌性病変 (Riddell) と診断された.
その異型細胞は粗顆粒状のクロマチン構造を持ち, 核小体の目立つ大型の細胞で, 大小不同と重積性を伴うクラスターを形成していた. 潰瘍性大腸炎46例でみられた異型細胞 (large bland cells, large active cells, Galambos) と比較すると, より大きく, 核小体が目立ち多形性が著明で, 明らかに区別できた. その細胞像は大腸癌6例のそれにより近い. 10年以上の経過を有するIBDでは悪性化の危険が高まることが確かめられているが, その早期発見の目的に細胞診が有効であった1例を報告し, 若干の考察を加えた.

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