抄録
腎細胞癌は, 多彩な組織像をとり得, 肉腫様の増殖を示すことも知られている. しかし, 肉腫様部分のみが検索材料となった場合, その診断は極めて難しい. 著者らは, 尿検査に異常なく, 転移巣から得られた細胞診材料が, 肉腫様部分に由来すると推測される細胞であったため生前確定診断ができず, 剖検によりようやく肉腫様変化を伴った腎細胞癌と診断し得た2例を報告する. 1例は咳漱を主訴とした48歳の主婦で, 腹部腫瘤のほかに転移性と思われる肺腫瘍および多発性皮下腫瘤が認められ, 後者より穿刺吸引細胞診を行った. 他の1例は, 腹部膨満感を主訴とした54歳の主婦で腹部腫瘤と著明な腹水貯留が認められ, 腹水細胞診を行った. 2例とも多核細胞あるいは巨細胞の孤立散在性出現が目立ち, それら腫瘍細胞の核膜は円滑であるが, 核辺縁がしばしば陥入し, 核小体が著明で, 強く肉腫が疑われた. しかし, 細胞質辺縁は多くの肉腫に見られるほど不明瞭ではなく, また種々の程度に小さな空胞が見られた.電顕的検索では, 細胞内小器官と微細線維とに富んだ大きな胞体をもち, 微絨毛は認められず, 大小不整の細胞突起を有した. 少数の細胞に未発達ながら接着装置が認められ, 上皮由来が強く示唆された.