日本臨床細胞学会雑誌
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21 巻, 2 号
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  • 中西 功夫, 松本 裕史, 深江 司, 前川 道郎, 中川 隆, 土田 達, 遠藤 幸三
    1982 年 21 巻 2 号 p. 141-146
    発行日: 1982年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    最近経験した子宮頸癌Ia期の14症例を細胞診と組織学的所見とを対比して再検し, Ia期癌の細胞像の特徴について組織学的見地から検討した. Ia期癌の細胞診における最も共通する所見は合胞状の腫瘍細胞の集団の存在と中表層型悪性細胞の混在であった. これらは組織学的に認められる労基底型腫瘍細胞の増殖の強さと浸潤部位における細胞分化を反映しているものと思われた. Cellular detritusは腫瘍細胞群の中心性壊死や遊走細胞浸潤と密接に関連し, 深達度が進行するにつれて出現していた. 腫瘍細胞の多形性や不均等粗顆粒状のクロマチンパターンをもつ腫瘍細胞の核所見も比較的多く認められ, これらは補助診断的価値を有するものと考えられた.
  • 佐藤 健, 横須賀 薫, 窪田 利幸, 西谷 巖, 石崎 善昭, 佐川 秀逸
    1982 年 21 巻 2 号 p. 147-153
    発行日: 1982年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    子宮頸部高度異型上皮26例, 上皮内癌33例および微小浸潤癌21例を対象として, 形態学上の核異型と核DNA量との関連性を検討した.
    1) Papanicolaou標本上の核異型は, クロマチンの粗大顆粒状凝集が上皮内癌では30%, 微小浸潤癌では75%で後者が有意に高く, 鑑別診断上の手がかりとなることを確かめた.
    2) 核径の測定結果より, 高度異型上皮と上皮内癌は, 類似した分布パターンを示し, これによる両者の鑑別は困難であるが, 微小浸潤癌では, さらに大きな核を有する細胞の出現する傾向を認めた.
    3) 核DNA量の測定成績から, 高度異型上皮, 上皮内癌および微小浸潤癌の分布パターンを比較検討した結果, これを鑑別のパラメーターとすることは困難であった.他方, Hematoxylin染色核質量を測定した結果より, 微小浸潤癌細胞は, 他の二者に比べて高い核質量をもつ細胞を含んでいることを確かめたので, これが, さきに述べた上皮内癌細胞との形態学的差異を示す根拠となっていることが示唆された.
  • 甲斐 一郎, 長野 寿久, 安井 志郎, 天神 美夫
    1982 年 21 巻 2 号 p. 154-159
    発行日: 1982年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    人工妊娠中絶後に悪性を思わせる異常細胞が, 細胞診に出現することが最近知られてきた. この異常細胞を脱落膜型, 円柱上皮型およびその他の3型に分けて検討したところ, 脱落膜型は主として中絶後2週間以内に多く, 円柱上皮型はそれ以後に多く出現することがわかった. この異常細胞の性格と由来を明らかにするため, 細胞核DNAの立場から研究を行った. 中絶後の内膜吸引細胞および再掻爬材料を用いて細胞分析を行い, FCMのICP-11型によって核DNAパターンを測定した・その結果2倍体域のみピークをもつA群と3~4倍体域に極めて低いピークをもつB群とに区別し得たが, A群は主として10日以内に多く, B群は20日以後に多くみられる. このことから出現細胞像と合わせ考えるとB群にみられる低い高倍体域のピークは円柱上皮型細胞のうち再生機転の盛んな新生細胞にあたると考えられる. また脱落膜型異常細胞はDNAモードが正常パターンであることから中絶後の脱落膜細胞の変性型細胞と考えたい.
  • Immuno-and Enzyme Cytochemical Observations
    Mitsuaki SUZUKI, Hiroyuki KURAMOTO, Shinichi IZUMI, Keiichi WATANABE
    1982 年 21 巻 2 号 p. 160-166
    発行日: 1982年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    絨毛癌は, 由来する胎盤に類似して, human chorionic gonadotropin (HCG) をはじめとする諸ホルモン, ならびに胎盤性alkaline phosphatase (ALP) 等の酵素を産生, 分泌する. しかしながら, これらの特異ホルモン, 酵素の細胞内局在に関する研究はあまりなされていない. そこでわれわれは, 教室にて樹立された絨毛癌細胞, GCH-nu株を用い, HCGならびにALPの細胞内局在を免疫細胞化学的に検索した.
    RCGは, およそ50~70%のGCH-nu細胞の細胞質内にその存在が確認され, BeWo株に比べかなり多くの細胞でHCG産生が営まれていることがわかった.
    またGCH-nu細胞の産生するALPは, 生化学的ならびに免疫学的検索から胎盤性ALPであることが証明され, その細胞内局在は主として細胞表面のmicrovilli表層のglycocalyxであることが判明した. 一方, この胎盤性ALPに関しては, 免疫細胞化学と酵素細胞化学との間で, その発現様式に差が認められた. すなわち, 免疫細胞化学的検索ではほとんどすべてのGCH-nu細胞に胎盤性ALPが認められたのに対し, 酵素細胞化学的検索では細胞がpileupしている部位を中心に, 一部の細胞にのみ活性が確認された. このことは, 酵素活性を示さない細胞の中にも抗原性は有するものが存在することを示すものであり, 細胞内における酵素等の存在を検索する上では, 酵素細胞化学だけではなく免疫細胞化学的検索も行う必要のあることを意味する.
  • 天野 悦男, 杉田 道夫, 杉下 匡, 天神 美夫, 石田 禮載, 阪口 耀子, 佐藤 和子
    1982 年 21 巻 2 号 p. 167-175
    発行日: 1982年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    子宮膣部の正常剥離細胞に主眼をおき, その成熟度の異なる細胞間のDNAヒストグラムでの相違点を, さらに異常細胞との鑑別点をつかみ, Impulse Cytophotometer 11型による細胞解析と臨床応用への可能性をさぐった.
    Papanicolaou染色によるsmearのmaturation-indexで, 左方移動85%以上のA群11例, 中央移動85%以上のB群28例, 右方移動85%以上のC群16例, 妊娠2~3ヵ月のD群17例の計72例につき検討し, 次の結果を得た.
    1) 核DNA量は, A群で最大で, B群D群の順に減少しC群で最小である.
    2) A群では50channelを, B, C, D群では45channelを超えない. C群では35channelまでのものがある.
    3) 全群をとおして, (3C+4C)/Total比は7.8を, 4C/2C比は2.2を, 4C/S比は3.2を超えない.
    4) A, B, D群で少数ながら分裂相細胞を, さらにC群では濃縮核細胞の存在を示唆した.
    5) 子宮癌に関するFlow-cytometryの臨床応用では, (3C+4C) を含む4Cを超える部分に注目していけば, 正常細胞の存在量のいかんにかかわらず, 測定上有意の差をもって判定可能であると考えられる。
  • 佐川 秀逸, 椎名 美博, 山田 良隆, 一戸 喜兵衛
    1982 年 21 巻 2 号 p. 176-180
    発行日: 1982年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    広汎子宮全摘術後の放射線治療による卵巣機能廃絶防止のため, 40歳以下の婦人では卵巣自己移植術を行っているが, これらの移植卵巣の内分泌機能について膣上皮細胞像の変化より観察した. 乳腺下に移植された卵巣は主として術後3週ころより腫大と縮小の周期的変化を開始するが, BBTが著明に2相性を示す症例群と単相傾向の群がみられた.2相性群では, 排卵期から高温にかけて移植卵巣が腫大し, 約1週間前後維持し, その後自然に消退する.
    卵巣縮小期におけるKPIおよびEIは低値であるが, 腫大期にはKPIおよびEIともに上昇を認めた. MIは腫大期および縮小期ともに中層細胞型を示しているが, 腫大期には表層細胞が増えて右方移動を示す傾向が明瞭にみられた。また血清中のLH, FSH, estradiolの検査から, これらはほぼ正常成熟婦人の, 月経周期レベルを変動していることが明らかとされた.
    移植卵巣は長期間にわたり活発に活動して膣皺襞の外観は正常に維持され, 膣上皮代謝の周期性も, ほとんど正常に行われていることが観察された.
  • 入江 康司, 杉島 節夫, 入江 砂代, 笹栗 靖之, 小宮 節郎, 森松 稔, 北城 文男, 山中 健輔, 生子 マチ子
    1982 年 21 巻 2 号 p. 181-189
    発行日: 1982年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    整形外科領域における細胞診に関する報告は少ない. われわれはNeedle aspiration cytologyによる診断を目的とし, 骨巨細胞腫5症例の手術時腫瘤捺印細胞像に電顕学的観察を併せ検討した. Jaffe & Lichtensteinによる組織学的分類はgrade I: 4例, grade II: 1例である. 細胞診学的特徴は紡錘形ないし楕円形で, 10~20μ, 平均13μの単核の間質細胞と20~100μ以上の大きさで, 中心性の10~50個以上の核を有する多核巨細胞で構成され, 時に褐色色素を貪食した細胞を散見する. 電顕学的には, 多核巨細胞の存在と間質細胞に, (1) 未分化問葉系細胞, (2) 線維芽様細胞, (3) 組織球様細胞を認め, 線維芽様細胞を主体としているが, 組織学的gradeが高くなるに従い未分化間葉系細胞の増加を認めた. 今回の検索では, 細胞診学的な単核間質細胞の異型性, 多核巨細胞の数および大きさと組織学的grade間に明らかな差はみられなかった. この点については, さらに症例を重ね, また線維芽様紡錘形細胞からなる腫瘍と対比し, 検討する必要があろう.
  • 豊原 時秋, 大久保 俊治, 及川 正道, 大倉 一雄, 高橋 年美, 石岡 国春, 榛沢 清昭, 佐藤 明, 梅津 佳英, 武田 鉄太郎
    1982 年 21 巻 2 号 p. 190-195
    発行日: 1982年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    胃キサントームの細胞診に関する研究報告はきわめて少ない. 著者らは, 胃キサントームと組織診断された12例のPapanicolaou染色, Sudan III染色およびPAS染色の塗抹標本を用いて, 胃キサントーム細胞の形態学的特徴について検討した. 胃キサントーム細胞は, 細胞が大型で大小不同性は著しいが, 核は小型で大小不同性や核形の不整はなく, 核クロマチンパターンの異型性が乏しい. また, 核小体は, 樹枝状で小さい. 核・細胞面積比はきわめて小さく, 胞体は泡沫状で淡明であり, さらに, Sudan III染色で陽性, PAS染色で陰性であることが特徴的な所見であった. 一見, 印環状癌細胞と類似するが, 核が高度の偏在傾向を示さない点, 小型の楕円形~円形核で, 不整核はなく, 核クロマチンが濃染しない点, Sudan III染色で陽性, PAS染色で陰性を示す点で細胞鑑別は可能であると考えられた. 胃の細胞診では, 円柱上皮細胞, 胃腺細胞, 再生上皮細胞, 赤血球, 白血球, リンパ球, 形質細胞, 組織球, 血管内皮細胞, 繊維芽細胞, 平滑筋細胞および良悪性腫瘍細胞が出現するが, 胃キサントーム細胞の特徴ある細胞像を総合的に判定すれば, これらの細胞との鑑別診断は容易であると考えられた.
  • 松田 実, 竹中 明美, 南雲 サチ子, 成瀬 靖悦
    1982 年 21 巻 2 号 p. 196-201
    発行日: 1982年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    最近4年間に, 皮膚の腫瘤135例に対して穿刺細胞診が施行された. このうち癌の転移は43例であり, 41例に陽性の成績を得た.
    原発巣の発見より先に, 皮膚の腫瘤の穿刺細胞診が行われた症例は9例であり, その内容は, 下咽頭癌3例, 腎癌2例, 肝癌2例, 原発不明2例であった. 腎癌1例を除く8例は細胞診陽性であった.
    腎癌の2例および肝癌の2例について臨床経過を述べ, 陽性例については, 採取された細胞の形態について観察した. 陰性例の1例は, 採取された細胞数が少ないため判定できなかったものである。
    皮膚転移巣を穿刺して得られた細胞は, 一般に重積性配列をとることが少なく散在性の傾向がみられるため, 上皮性か非上皮性かの判定がしばしば困難である。したがって採取された細胞をよく観察して, 特徴的所見を見出し, 原発巣の推定に役立たせる必要がある. そのためにはすべての臓器癌の剥離細胞像ならびに穿刺吸引細胞像に精通していなければならない.
  • 君塚 みち子, 村田 松雄, 野口 泰子, 武村 民子, 池田 栄雄, 田中 昇
    1982 年 21 巻 2 号 p. 202-207
    発行日: 1982年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    1973年から1979年の問に取り扱われた389, 760件の尿沈渣のうち, 異常な細胞 (群) が検出され, 通常のwet-mount標本に見出された例について, そのカバーグラスをはがし, 固定, PAPあるいはGiemsa染色を行って観察し, 68例の原発性ないし, 転移性あるいは, 隣接臓器より浸潤した悪性腫瘍を診断することができた. 光顕視野下での観察では細胞微細構造の判定は, 必ずしも容易ではないが, URI-Ce1等による超生体染色はその一助となることを見出した. 病院の中央検査部門においてwet-mount標本を用いて, 一般尿検査の際にも, 単に細胞成分の構成を調べるだけでなく, 異常な形態を示す細胞の存在を注意することの必要性を強調した.
  • 電子顕微鏡学的所見との比較
    手島 英雄, 井上 功, 木寺 義郎, 柏村 賀子, 柏村 正道, 松山 敏剛, 塚本 直樹, 滝 一郎, 山口 善行, 川上 昌男
    1982 年 21 巻 2 号 p. 208-213
    発行日: 1982年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    61歳未妊主婦の子宮頸部と腟にみられた悪性黒色腫について報告した. 患者は不正性器出血を主訴として来院し, 病変は子宮頸部から腟へ連続的に進展しており, 腟病巣の先端部には衛星病巣を認めた. 組織学的には, Palmoplantar subungal mucosal melanomaが最も考えられた. 細胞診像では類円形腫瘍細胞が主体で, 紡錘形細胞も散在した. 腫瘍細胞胞体内メラニンは微細顆粒状であり, 組織球内では粗顆粒状で凝集性のメラニン顆粒を認めた. N/C比は高いものから低いものまで種々であり. 核の極度の偏在を示す細胞も認めた.明瞭な核小体は小型で, 数は1~2個, その周囲には核小体周囲明庭を認めた. 明らかな核内空胞を伴った腫瘍細胞は1個のみ認め, 多核巨細胞も散在した. 電顕的にはSagebie1らのいう核内腔胞とは異なる本態不明の核内封入体を認めた. 他に腫瘍細胞胞体内に軸索体様構造物も認めた.
  • 入江 康司, 杉島 節夫, 入江 砂代, 笹栗 靖之, 森松 稔, 八塚 宏太
    1982 年 21 巻 2 号 p. 214-219
    発行日: 1982年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    血痰を主訴とし肺癌の疑いで入院し, 気管支擦過細胞診で気管支カルチノイドと診断された1症例について報告した. 細胞像は, 円柱上皮を背景に弱い平面的集団に散在傾向を示し, 一部ロゼット配列をみ, 淡いレース状の細胞質で偏在性の類円形均一なクロマチン増量をきたした核で典型的カルチノイドの像であった. 術後の検索では左上葉に小児手拳大の比較的境界明瞭な灰白色, 充実性腫瘤をみ, 組織学的にも充実性胞巣構造で均一細胞で構成された典型的カルチノイドであった. 電顕学的には原形質内に特有な120~300mμの中心に高電子密度のcoreを有し, 限界膜で囲まれた神経分泌顆粒を認めた. なお本症例は内分泌検査では異常なく, カルチノイド症候群もみられていない.
  • 田中 伸子, 額田 典子, 荒木 俶彦, 本山 悌一, 石原 法子, 仲間 健
    1982 年 21 巻 2 号 p. 220-227
    発行日: 1982年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌は, 多彩な組織像をとり得, 肉腫様の増殖を示すことも知られている. しかし, 肉腫様部分のみが検索材料となった場合, その診断は極めて難しい. 著者らは, 尿検査に異常なく, 転移巣から得られた細胞診材料が, 肉腫様部分に由来すると推測される細胞であったため生前確定診断ができず, 剖検によりようやく肉腫様変化を伴った腎細胞癌と診断し得た2例を報告する. 1例は咳漱を主訴とした48歳の主婦で, 腹部腫瘤のほかに転移性と思われる肺腫瘍および多発性皮下腫瘤が認められ, 後者より穿刺吸引細胞診を行った. 他の1例は, 腹部膨満感を主訴とした54歳の主婦で腹部腫瘤と著明な腹水貯留が認められ, 腹水細胞診を行った. 2例とも多核細胞あるいは巨細胞の孤立散在性出現が目立ち, それら腫瘍細胞の核膜は円滑であるが, 核辺縁がしばしば陥入し, 核小体が著明で, 強く肉腫が疑われた. しかし, 細胞質辺縁は多くの肉腫に見られるほど不明瞭ではなく, また種々の程度に小さな空胞が見られた.電顕的検索では, 細胞内小器官と微細線維とに富んだ大きな胞体をもち, 微絨毛は認められず, 大小不整の細胞突起を有した. 少数の細胞に未発達ながら接着装置が認められ, 上皮由来が強く示唆された.
  • 1982 年 21 巻 2 号 p. 279-442
    発行日: 1982年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
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