日本臨床細胞学会雑誌
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腱鞘巨細胞腫 (Giant Cell Tumor of Tendon Sheath) とその剥離細胞像および穿刺生検細胞診上の問題点
垣花 昌彦
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1982 年 21 巻 3 号 p. 469-475

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抄録

四肢の軟部組織腫瘍を術前に正確に診断することは, 過不足のない適正な手術を行う上で必要であり, このために穿刺生検細胞診が導入されて, 現在, 症例を重ねながら診断体系を作りつつある現状である.
腱鞘巨細胞腫 (G. C. T. T. S.) は多くは指趾に生ずる腫瘍で組織球様細胞, 泡沫細胞, 線維芽細胞様細胞からなる多彩な組織像を示す疾患で, その発生母地, 本態について多くの議論や問題点がある. このような疾患に対して穿刺吸引細胞診を行う場合, いかなる問題があるか?, 剥離細胞像の観察が組織学的問題点にどこまで関与することができるか? などにつき文献的考察を加えながら論じた.
(1) G. C. T. T. S. 剥離細胞像も組織球様細胞, 線維芽細胞様細胞, 泡沫細胞, 多核巨細胞からなり, この分析からも本疾患は線維性組織球腫に属すると考えられる. (2) 剥離細胞像および組織培養所見からみると組織球様細胞と線維芽細胞様細胞はたがいに類似, 移行があり発生母地は多方向に分化する能力のある細胞から生じたのではないかと推察した. (3) 巨細胞の成因はfusionのみでなく無糸核分裂, 核の分芽形成も否定できない. (4) G. C. T. T. S. のごとき多彩な組織像を示す腫瘍の穿刺吸入する場合は方向, 場所を変えて2~3回刺入し, すべての形の細胞を採取することが必要である.

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