日本臨床細胞学会雑誌
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穿刺吸引細胞診により診断し得た直腸平滑筋肉腫の1例
木村 章彦平岡 裕工藤 浩史飯塚 保夫古賀 成昌
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1983 年 22 巻 3 号 p. 638-641

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抄録
直腸の粘膜下腫瘍例に対し, 術前の穿刺吸引細胞診により平滑筋肉腫と診断したので, その細胞所見を中心に述べ, さらに消化管の粘膜下腫瘍に対する穿刺吸引細胞診の有用性についても述べた.穿刺吸引細胞診は肛門鏡にて直視下に施行した.細胞所見では, 辺縁が比較的明瞭で中央に核が位置する紡錘形細胞, 大小不同が著明で類円形の細胞, および裸核状となった細胞を孤立散在性に, 一部では集合性に認めた.異型性の強いものでは, 核膜の陥入・切れ込みも認めた.クロマチン分布は, 粗から密までさまざまであった.切除標本捺印細胞診でも, ほぼ同様の所見が得られた.
消化管粘膜下腫瘍の質的診断を行うには, 目的とする細胞の確実な採取が望まれるが, 腫瘍が正常粘膜で覆われている場合には, 通常の生検鉗子にて粘膜下層から固有筋層に至るまでの十分な組織片の採取は困難で, 組織診はもとより, 生検材料の捺印細胞診にてもその診断は不可能なことが多く, このような場合には, 穿刺吸引法による細胞診が有用と考えられる.
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