日本臨床細胞学会雑誌
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神経線維腫症に合併した悪性髄膜腫の1例
その捺印細胞所見
衣笠 松男金岡 明博田中 登美子三宅 秀一鷹巣 晃昌大月 均寺浦 哲昭
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1986 年 25 巻 3 号 p. 552-557

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抄録

家族性神経線維腫症に合併した悪性髄膜腫の1例を報告した.患者は38歳, 男性, 軽度の頭痛と言語障害で発症した.
腫瘍は左前頭硬膜部に初発し, 術後再発した.剖検時その大きさは16×14×8cmで脳実質や顔面への著明な浸潤を認めた.割面は灰白質調を呈し, 弾性硬であった.捺印細胞診上, 腫瘍細胞の多くは辺縁不明瞭な淡緑色の胞体を有して紡錘形ないし線維状を呈していた.核は類円形から楕円形で, 細顆粒状ないし粗大顆粒状のクロマチンを示し, 1~3個の不整形の著明に腫大した核小体を認めた.核縁の陥凹像, 多核巨細胞あるいは核分裂像が多数認められた.組織学的には一部に異型の強い紡錘形細胞が束状, 渦巻状に配列し血管周囲にも増生していた.免疫および酵素組織化学的検索では, 腫瘍細胞は, glial fibrillary acidic protein陰性, myoglobin陰性, S-100蛋白陽性, アルカリフオスファターゼ強陽性であった.これらの所見は, 本腫瘍が悪性髄膜腫であることを示唆した.

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