日本臨床細胞学会雑誌
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乳腺疾患における細胞質内小腺腔の形態と, その細胞診断学的意義
石原 明徳上森 昭木村 多美子北畠 修生中西 国夫矢谷 隆一
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1987 年 26 巻 1 号 p. 102-109

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抄録

乳腺疾患の細胞質内小腺腔 (ICL) について検討した.
ICLはPap., PAS, Alcian blue, MGG染色, および酵素抗体法を用いたCEA染色で観察することができるが, このうちPAS染色での観察が最も容易である.ICLは形態的に小腺腔内の分泌物の有無により, 分泌物の認められるI型と, 分泌物の認められないII型に分類される.
細胞診標本では, ICLは乳癌の51%に認められるが, 良性疾患では線維腺腫の1例 (0.5%) にのみ認められたにすぎない.また癌例では, 硬癌や小葉癌で陽性率が高いが, 充実腺管癌, 髄様癌, 粘液癌では低率である.
細胞学的に異型性の強い癌におけるICLの陽性率は高いが, 異型性の弱い癌の陽性率は低い.
細胞診において, ICLは癌の決定的なマーカーとはなり得ないが, チェックすべき重要な所見であり, 癌診断の一助になることが確認された.

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