日本臨床細胞学会雑誌
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コルポスコープおよび細胞診で予知しえたホルモン産生腫瘍の1例
清水 良明石田 禮載柳沢 弥太郎崎平 公子落合 和彦株本 和美天神 美夫寺島 芳輝
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1989 年 28 巻 6 号 p. 856-861

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抄録

子宮癌集団検診にてコルポスコープおよび子宮腟部細胞診を施行し, ホルモン産生腫瘍の存在を疑いえた症例を経験したので, 細胞標本のホルモン評価を加え報告した.
症例は, 76歳の閉経後31年を経た婦人で, コルポスコープにて多量の頸管粘液と偽ビランを認め, 子宮腟部細胞診にてMIが右方移動を示し, なおかつ内膜細胞診では子宮内膜増殖症が疑われ, 何らかのestrogen活性の存在が示唆された. 術前のホルモン検査では, E252.1pg/mlと高値を示した. ホルモン産生腫瘍の診断のもとに手術が施行されたが, 左卵巣は多房性のendometrial cystが大半を占め, 一部間質の増殖が認められるのみで, いわゆるfunctioning tumorの所見とは異なっていた. また, 子宮内膜はcystic hyperplasiaの像を示し, estrogenの効果と思われた. 術後のホルモン検査ではE216.3pg/mlと低下しestrogenはやはり卵巣腫瘍より産生されていたと思われた.
細胞標本のホルモン評価では, 本症例においてKPIとEIが高値を示し, 表層細胞の大きさは, 有意に小さかった.

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