日本臨床細胞学会雑誌
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早期乳癌における乳頭分泌細胞診の重要性
T0およびTis乳癌6症例の検討
鏡 十代栄建部 勝彦山田 恭子浅野 ツヤ子関谷 政雄
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1989 年 28 巻 6 号 p. 924-929

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抄録

乳頭分泌物の直接塗抹法により診断した1例および集細胞法 (蓄乳法) を併用しmicrodochectomyで確認した5例, 計6例のT0・Tis乳癌を用い乳頭分泌細胞診について検討した. 6例中3例は乳頭分泌物が唯一の自・他覚的症状であった.
乳頭分泌物内には全例で赤血球がみられ, 4例で壊死物が認められた. 癌細胞の核長径は7~10μ と小型で, その細胞集塊は乳頭状構造を示す症例が多かった. 直接法と蓄乳法を比較すると後者では乾燥がなく良好な状態で観察でき, また得られた細胞集塊数は1~37倍と多く得られた. したがって直接法で判定不能であった3例が蓄乳法で陽性と判定できた. ただし1例は直接法で陽性であったが蓄乳法では疑陽性にとどまった. 組織学的には5例が非浸潤性乳管癌, 1例が浸潤性アポクリン癌であった.
乳頭分泌物で陽性を示す症例では早期乳癌の頻度が高いことを考慮すると, 乳頭分泌細胞診, 特に蓄乳法は診断的意義が高く, また疑陽性例の存在などに対してmicrodochectomyの併用により診断率が向上できると考えた.

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