日本臨床細胞学会雑誌
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乳腺穿刺細胞診細胞分布パターンの研究
原島 三郎荷見 勝彦平田 守男南 敦子都竹 正文池永 素子古田 則行
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1991 年 30 巻 3 号 p. 439-447

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抄録

組織所見の確認されている乳腺疾患64例の穿刺細胞診標本の細胞分布パターンについて検討した.症例は乳腺症5例, 乳管内乳頭腫2例, 線維腺腫10例, 非浸潤性乳管癌6例, 乳頭腺管癌8例, 充実腺管癌15例, 硬癌12例, 粘液癌2例, 髄様癌1例と浸潤性小葉癌3例であった.
乳腺症では泡沫細胞, アポクリン化生細胞と乳腺細胞群がみられた.乳管内乳頭腫では結合性の強い乳頭状細胞群がみられた.線維腺腫ではシート状, 多形型細胞群に付着し, または細胞群の周囲に筋上皮細胞が散在していた.一般に, 良性疾患では細胞の結合性が強いが, 線維腺腫の一部に弱いものがあった.
悪性疾患では, 非浸潤性乳管癌で乳頭状と多形型細胞群がみられた.乳頭腺管癌では核の大小不同のある, またはない乳頭状細胞群がみられた.充実腺管癌では細胞数が多く, 結合性が強い場合と弱い場合とがあった.硬癌では小型細胞が少数散在性またはインディアンファイル状に出現する場合と散在性の細胞と細胞群が出現する場合とがあった.粘液癌では粘液の湖の中に島状細胞群が浮いているようにみえた.髄様癌では大きな細胞と多数のリンパ球がみられた.浸潤性小葉癌では小型の細胞が散在していた.
細胞分布パターンの研究は, 乳腺疾患の組織構築と細胞診断の関係の理解のために有用である.

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