アミラーゼ産生肺癌の3例を経験したので細胞所見を中心に報告する。症例は各々, 48歳, 63歳, 38歳のいずれも男性で, 前2例は胸水中に, 後1例は心嚢水中に腺癌細胞を認めた.前2例は剖検にて肺原発乳頭状腺癌を確認したが, 後1例の組織所見は確認していない。これら3例の腺癌細胞に共通する細胞学的特徴は, 乳頭状結合と, 高いN/C比, 正円形の核と中央の大型核小体であり, 内側胞体は密, 重厚で辺縁胞体は微小空胞状である点と思われた.散在し大型化した細胞においてはN/C比の低下と多形化がみられ, 内, 外側胞体の差はより明確となった.PAS染色, アルシアンブルー染色はともに陽性で, PAP法による唾液腺型アミラーゼ染色 (以下S-AMY染色という) も, 陽性であった.
電顕では, 核縁クロマチンの薄い切れ込みのある核と, 微繊毛をもつ胞体と外分泌顆粒を認めた
.3症例を呈示し,'それらの細胞所見, 組織所見, 電顕所見を記載し, アミラーゼ産生型肺癌の発生起源について若干の考察を加えた.