日本臨床細胞学会雑誌
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卵巣原発Endodermal sinustumorの1例
特に胸腹水細胞像について
伊達 晶子則松 良明伊藤 隆志川西 功躬野口 秀樹古谷 満寿美香田 浩美能登原 憲司
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1991 年 30 巻 3 号 p. 522-526

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抄録

胸腹水中に腫瘍細胞を認めた卵巣原発Endodermal sinustumor (EST) を経験したので報告する.症例は28歳女性.3妊1産.下腹部痛, 不正性器出血の主訴にて来院し, 超音波検査, CTscanにて子宮上部に充実性腫瘍を指摘された。術前検査でCA-125, neuron-specificenolase (NSE), α-fetoprotein (AFP), α1-antitrypsin (AAT) は高値を示し開腹手術, 術後化学療法が施行された.術後胸腹水細胞診検査にて出血性背景の中に, 淡く泡沫状の細胞質, 大小不同の不正形核を有する細胞集団を認め, 胞体内外にはオレンジG-ライトグリーン好性, PAS強陽性のhyalineglobules (HG) がみられた.組織所見はSchiller-Duval body, 内胚葉洞構造を形成する腫瘍であり, 細網状構造の中央部分にはHGを多数認め, PAS陽性, ジアスターゼ抵抗性を示した.免疫組織化学染色にて, 胎盤性アルカリホスファターゼ, NSE, Leu7, クロモグラニンが腫瘍細胞のみに, AFP, AATが腫瘍細胞およびHGに陽性を示した.本症例の胸腹水細胞像は腺癌との鑑別が困難であるが, 胞体内外にPAS強陽性のHGを認めることによりESTの診断が示唆された.

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