日本臨床細胞学会雑誌
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腹水中に腫瘍細胞が出現した卵管原発腺癌の1例
中野 勝彦飛岡 弘敏北村 玲子小関 孝之吉田 豊三好 正幸蠣崎 和彦
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1991 年 30 巻 4 号 p. 723-726

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抄録

腹水細胞診で興味深い所見が得られた卵管原発腺癌の1例を経験したので報告する
症例は66歳, 女性.不正出血にて初発後, 1年2ヵ月で著明な腹水貯留を認めた.術前の腹水細胞診で, 砂粒体およびいわゆる偽線毛を伴う多数の腺癌細胞を認め, 卵巣原発漿液性嚢胞腺癌が疑われ, 化学療法施行後子宮全摘術および両側附属器切除術が施行された.開腹時, 腹腔内に広汎に結節状転移巣を認め, 術後の病理組織学的検索により, 卵巣および子宮には腫瘍を認めず, 左卵管内腔に卵管壁と連続して直径約1.5cmの結節状腫瘤を認め, 卵管原発腺癌と診断した.
原発性卵管癌は細胞診においては特徴的所見に乏しく, 術前診断は困難であるとされている.砂粒体および偽線毛は卵巣原発漿液性嚢胞腺癌に特徴的な所見であるが, 原発性卵管癌にこれらが認められたとする報告はこれまでなく, 今回これが認められたことは, 同腫瘍の細胞診断および組織発生を考えるうえで興味深い.

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