日本臨床細胞学会雑誌
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肝芽腫3例の細胞学的特徴
正和 信英山田 喬藤原 利男信田 重光佐々木 英夫佐藤 豊彦
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1991 年 30 巻 6 号 p. 1090-1097

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抄録

小児の悪性肝腫瘍のうち代表的な肝芽腫の細胞像について, 自験3例をまとめて, その特徴像を報告する.3例とも生後数日から1ヵ月で発見され, 2例は腫瘍の捺印, 1例は穿刺吸引による細胞診標本を用い, 組織像と対比して検討した.
腫瘍細胞は, 分化度により, 2型に大別した.すなわち, 高分化肝芽腫は, 正常肝細胞に類似するが, より小型で異型的な細胞がシート状ないし散在性に出現, 個々の細胞では, N/C比は1/3~4, 胞体はレース状かつ弱好酸性, 核形は類円から楕円形, 核クロマチンは中顆粒状に増加し, 核小体は目立たず, しばしば髄外造血細胞の出現を伴っていた.骨髄巨核球由来と思われる多核巨細胞も混在していた.一方, 低分化型肝芽腫では, 表在する細胞がほとんど裸核の不規則な集塊, 疎に結合する葡萄房状ないしシート状集団, またロゼット様配列など, 多彩な出現パターンがみられた.個々の細胞では, 核の性状は高分化型と類似するが, 核形はより不整で, クロマチンは中から粗顆粒状に増量し, N/C比は1/1~3と高く, 肝細胞への分化は明らかでなかった.核分裂像も散見された.細胞形態と予後との関連では, 低分化型なほど, 患者の予後を悪化する因子になりうると考えられた.

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