日本臨床細胞学会雑誌
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破骨細胞様巨細胞が多数出現した乳癌の1例
布山 繁美
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1991 年 30 巻 6 号 p. 1115-1119

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抄録

多数の破骨細胞様巨細胞の出現をともなった乳癌の1例を経験し, その細胞像を観察し得たので文献的考察を加えて報告する.症例は41歳女性の右乳腺腫瘍で, 臨床的には線維腺腫が疑われた.腫瘤の切除生検が施行され, その際に捺印細胞診が行われた.捺印細胞像ではきれいな背景のなかに上皮性細胞集塊とともに多数の多核巨細胞を認めた.上皮性細胞集塊は結合性が強く, 核重積性と核の軽度の大小不同を認めたが, 異型性は軽度であった.多核巨細胞は広い胞体を持ち, 大きさおよび核の数はさまざまで, 大きなものでは核数が50個以上のものもみられた.巨細胞は主として上皮性細胞集塊周辺部に存在していた.組織学的には主として小型の腺管よりなるinvasiveductal carcinomaであり, 間質には非腫瘍性と考えられる多数の破骨細胞様巨細胞を認めた.パラフィン切片を用いた免疫組織学的検索では, 癌細胞はEMA, MB-が陽性を示し, 破骨細胞様巨細胞はVimentinのみが陽性であった.免疫組織学的検討などの結果から, 癌細胞と多核巨細胞は性状が異なるものであり, 本例の乳癌にともなって出現してきた破骨細胞様巨細胞は間質由来であり, 反応性に出現してきたものと考えられた.

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