1991 年 30 巻 6 号 p. 1193-1198
neuroendocrine differentiationを示した子宮頸部の低分化型腺癌の1例を経験し, その細胞診, 組織学的特徴を光顕, 免疫組織化学, 透過型電顕を含めて検討した.
症例は38歳の経産婦で, 不正性器出血を主訴とし, 細胞診では子宮頸部腺癌と判定されたが生検にてneuroendocrine differentiationを示す低分化型腺癌が示唆された.摘出標本の組織像では, 中型の円型ないし多角型の腫瘍細胞がシート状, 索状あるいはリボン様の配列を示し子宮頸部間質に浸潤性に発育しており, 腺管構造をとる腫瘍細胞も認めた.また, 頸管腺細胞は, 上皮内腺癌の像を呈していた.Grimelius染色, chromogranin Aに陽性で, 電顕上神経分泌顆粒を有する腫瘍細胞も散見された.腫瘍細胞の核計測では, 神経内分泌能を示す細胞核はそうでないものに比べ有意に小型であった.
neuroendocrine成分を含む子宮頸癌は予後不良であり細胞診での診断が困難なことが多い.子宮頸部の低分化型癌では積極的にGrimelius染色, 免疫組織化学, 電顕によりneuroendocrine differentiationの有無を確認することが必要であると考えられた.