日本臨床細胞学会雑誌
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女性化乳房の穿刺吸引細胞像
小林 照明前田 陽子三上 貴代工藤 玄恵
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1991 年 30 巻 6 号 p. 990-994

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抄録

特発性女性化乳房15例 (40~82歳, 平均64歳) の穿刺吸引細胞診材料を用い, その細胞学的特徴について検討した.比較対照として女性の線維腺腫10例と男性乳癌4例の穿刺吸引細胞診材料を選んだ.女性化乳房は以下のような特徴的な所見を有していた.
1) 細胞は主に集塊として出現する。その細胞集塊の絶対数は少ないが, 大集塊 (100個以上の細胞集団) と中集塊 (11~99個) が相対的に多い。そしてその集塊は高い核密度と多少の核配列の乱れ, そして重積性を示す共通性を有している.
2) 細胞は細胞質に乏しく, 核形は比較的小型で大きさの揃った円形~類円形から, 大小不同で不整形のものまで幅がある.クロマチンは通常細穎粒状で比較的均一に分布し, 核小体は目立たず, あっても1~2個の小型である.
3) 核分裂の数は一症例当たり線維腺腫や癌例と比較して少なめであるが, 頻度的に9例 (60%) と高い.
4) 線維腺腫の全例に多数みられる双極裸核の出現頻度は15例中4例と低く, そしてその絶対数も少ない.
5) 集塊中の筋上皮細胞は全例に認められるが, 大半の症例は少数である.
6) 女性化乳房の細胞所見は良性のそれであり, 乳癌とは容易に鑑別可能である.

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