日本臨床細胞学会雑誌
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子宮頸部の境界病変とその細胞診
HPV感染からみた境界病変の取扱いについて
佐藤 信二矢嶋 聰今野 良
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1992 年 31 巻 1 号 p. 6-10

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抄録

近年の分子生物学の進歩により, ヒトパピローマウィルス (HPV) と子宮頸癌およびその境界病変 (前癌病変) との密接な関連が指摘されるようになり, 子宮頸癌の組織発生におけるHPVの関与は無視できない事柄となっている.そこで, 子宮頸部諸病変とHPVとの関わり合いを明らかにするため, 異形成病変の長期観察例を対象に, 病変の消長とHPV感染の関連につき検索した.まず高度および中等度異形成45例を対象に, ISH法およびPCR法によってHPVDNAを検出した.45例中, 進行群では81.3%に, 消褪群では69.0%にHPVを検出した.両群ともに高度異形成例でより高い検出率であった.HPV陽性高度異形成から進行したのは50%であったのに対し, HPV陰性高度異形成から進行したものはなかった.また中等度異形成では, HPV陽性群, 陰性群ともに進行したものは約30%, 消褪したものは約70%であった.つぎにHPV16型陽性子宮頸癌8症例の異形成followup期間中の生検組織中のすべてにHPVが存在し, 長期間の持続感染が先行していた.

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